【国内動向】回転機器の予知保全は「AI+専門家」へ——振動・温度の先に摩耗を読めるか
1. 何が起きたか(要約)
三井情報は「メンテナンス・レジリエンス2026」(第52回プラントメンテナンスショー、2026年7月15〜17日/東京ビッグサイト)で、回転機器向け予知保全ソリューション「AssetWatch」を紹介した。この製品は、3軸加速度と温度を測る無線センサー、収集ハブ、クラウド送信ルーターをパッケージ化し、専用4G回線で社内ネットワークを介さずデータを上げる構成になっている。クラウド側ではFFTによる周波数分析とAIによる一次分析が行われ、機械状態監視技術者(CME)が検証して異常原因の分析や保全アドバイスを返す。センサーは−40〜+85℃、30rpmの超低速にも対応し、冷凍倉庫・冷凍食品工場のモーター/コンプレッサー利用を想定したデモも行われた。米国AssetWatch社の製品で、2024年4月から三井情報が国内販売を開始した。
注目する点は、センサー導入だけではなく「AIの一次見立て+専門家の検証」をセットにした予知保全が組み込まれ、超低温など人が入りにくい現場まで広げられている、という動きです。
2. 注目されるポイント
- 設備保全DXの論点は「センサーを付けたか」から、誰が・何を根拠に・どの摩耗モードを疑うかへ移っています。
- AI単独のアラートは現場で信頼されにくい一方、CME(状態監視技術者)が介在するやり方は、日本の保全現場の意思決定に合いやすいです。
- 冷凍倉庫など超低温は、潤滑の粘度上昇・グリース硬化・シール柔軟性低下が起きやすく、振動・温度の異常とトライボ故障が直結しやすい環境です。
- 「データはあるが原因が特定できない」これは現場の課題の入口に過ぎず、振動スペクトルと油・グリース・摩耗粉などの関連をどうつなぐかが、次のステップになります。
3. 日本の現場で起きうること(最重要)
重要なことはAssetWatch自体の製品評価ではなく、同じような構図が起きている日本の工場・プラントでどのような対処が必要であるかを考えなければなりません。回転機器の予知保全は、アラートが出たあとに 軸受損傷・アンバランス・ミスアライメント・潤滑不良・電食 のどれかを切り分けられなければ、保全コストだけが増えることになります。
想定される症状・困りごと
- 振動上昇のアラートはあるが、停止して開ける判断がつかない
- 温度は上がるが、グリース劣化なのか過負荷なのか分からない
- 超低温・低速域で、通常の振動閾値がそのまま使えない
- AIの一次分析と、現場ベテランの感覚が食い違う
- 油分析・摩耗粉分析は別系統で、振動データとつながらない
まず確認したいこと
- 対象機器と運転条件 … 回転数(低速含む)、荷重、起動停止、周囲温度(特に−40℃近傍)
- 計測の中身 … 加速度3軸の取り付け位置、サンプリング、FFTで見ている帯域
- 潤滑の実態 … 油/グリース種別、補給・交換履歴、低温側の粘度・離油
- アラート後の手順 … AI一次分析→誰が検証し、どの保全アクションに落とすか
トライボロジー/設計・保全の論点
- 振動・温度は「異常の有無」には強いが、摩耗モードの特定には潤滑状態・摩耗粉・表面損傷の情報が必要です。
- 超低温では、潤滑膜が切れやすい/固めすぎるの両方が起き得ます。センサー対応温度と、潤滑仕様の使用温度範囲は別問題です。
- 「AI+専門家」の価値は、アラート件数を減らすことより、再発する異常を摩耗・潤滑・組立のどれに寄せるかにあります。ここが曖昧だと、予知保全は監視コストになります。
4. いま自社でできること/専門家が必要な境界
| 状況 | 自社 | 次のアクション |
|---|---|---|
| センサー導入・閾値の見直し | ✓ | 運転条件と取り付け位置を棚卸し |
| 潤滑変更・補給周期の見直しで改善しそう | ✓ | 低温粘度・交換履歴を確認して短期トライアル |
| アラートは出るが原因が切れず再発する | ✗ | 振動×潤滑×摩耗の切り分けが必要 |
| 保全DXの投資判断(何を測り、誰が読むか)が曖昧 | ✗ | 状態監視の読み方ごと専門家と設計 |
課題の整理が必要なら
状態監視データはあるが、「軸受か・潤滑か・運転条件か」が切れない場合は、まず計測項目と現場症状の対応づけが有効です。
- 簡易ヒアリング(無料・短時間) … 課題の言語化を支援
- 有償アセスメント … 油分析・振動・摩耗要因の切り分けと対策方針の提示
→ 相談は wp.mkc15.net またはサイトのお問い合わせより (公開中の問い合わせURLに置き換えてください)
5. まとめ
MONOistが報じたAssetWatch紹介は、回転機器予知保全が 無線センシング+AI一次分析+CME検証 のパッケージとして展示されています。日本の工場にとっての本丸は製品の導入ではなく、振動・温度の先に摩耗と潤滑を読める体制があるかにあります。超低温・低速・人が入りにくい環境ほど、センサー導入と同時に「異常をどのトライボ故障に落とすか」の言語化及び可視化が重要となります。
参考・出典
- MONOist:超低温環境も対応、AIと専門家がタッグ組む回転機器予知保全ソリューション(2026-07-23)
- 関連トライボニュース(サイト内):https://mkc15.net/ (最新動向解説/保全)





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